SPEEDI(スピーディ)の問題点
2012年3月21日
宇佐美 保
2011年12月26日の「sankei express」には、
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/539827/
次のように書かれています。
今年最大の出来事といえば、何と言っても東日本大震災とそれに伴う東京電力福島第1原発事故だが、ときの最高指導者だった菅直人前首相(65)は今、戦々恐々としているのではないか。事故原因究明のため今月(12月)、政府から独立して国会に設置された事故調査委員会(委員長・黒川清元日本学術会議会長)が年明けから本格稼働するからだ。 「国会の事故調査委で徹底して原因究明、責任追及をやるべきだ。菅氏も含めて(証人喚問し、偽証などの)場合によっては牢屋に入れることが必要だ」 みんなの党の渡辺喜美代表は12月16日の記者会見で強調した。渡辺氏がわざわざ「国会の」と断ったのには理由がある。 今年5月には、政府内にも原発事故調査・検証委員会が設けられたが、これは事故原因の解明を目的としており、原則として個人の責任追及は行わない。それもあり、発足時にも野党側からは「政府の機関が政府の責任を認めるわけがない」という批判が出ていた。 一方、今回設置された国会の事故調査委は衆参両院の議院運営委員会合同協議会の下に置かれた。この協議会に国政調査権に基づいて証人喚問や資料提出を要請できる。強力な権限を持つため、「国民による国民のための調査」(黒川氏)が期待されている。 |
なんで、菅さんが「戦々恐々としている」のでしょうか!?
「国民による国民のための調査」が期待されているのなら、その菅さんを「牢屋に入れる」のではなく、事故を起こした東電、原子力村の面々、又、彼らを非難もせずにいたマスコミ等「牢屋に入れる」べきではありませんか!?
菅さんが情報を隠ぺいしたとの非難される方々が多々居られるようですが、一寸待ってください。
その件に関して、朝日ニュースター「国際観察(2011年7月10日)司会:葉千栄氏」に於ける、下村健一氏(内閣審議官)の貴重な発言を聞くことが出来ました。
下村健一氏は
“菅さん一体何やっているかわからないよ!”と菅総理にいう機会があって、 “情報ちゃんと出せる人が近くにいないのか?!”と言ったら、“じゃあやってくれ” |
という事で、内閣審議官になり官邸に入ったとのことです。
その立場での下村氏の発言は、以下の通りでした。
何かメディアが報じないと“官邸の圧力だろう”とよく言われますが、(官邸に)入ってみますと、この8か月、“ここで、いっちょ、圧力かけるか!”みたいな事は全くなかった。 あの頃のことを振り返ってみると、原発事故が起きた直後、数日間の本当に大変な状況の中で、官邸にいて、菅総理や、枝野長官から、しょっちゅう周りの人たちに出ている言葉は、“いいか、不都合なことがあっても隠すなよ!”と、“とにかく情報を出してゆくからね”と、繰り返し繰り返し聞きました。 私も広報担当者として、それを聞いて、一種安堵のような気持ちがありました。 “出し具合一寸気を付けてくれよ”と言われたら凄く嫌ではありませんか、やっぱり。 |
利権などに無縁の立場にいる人が、不都合な情報も無い筈ですから、
「不都合なことがあっても隠すなよ!」 |
は当然すぎるほど当然で、疑う余地は無い筈です。
また、次を続けます。
そうではなく“わかったことはちゃんと出そう。ただ不確かなことは流すなよ”と、いうこの二つが結局今に至って思うんですけど、非常に難しいせめぎ合いだった。 まさにメルトダウンの件はそれだった。 起きてるかもしれないけど、今に至るまで、誰も実際の炉心の状態を見に行ってないのですから、それ位人知を超えた人間の手に負えない事が起きている中で、又、学説までも、その事実をどう評価するかに広い幅(筆者注:極端には問題でないのか、大問題なのかの幅)があり、どこに線を引くかとの(筆者注:実際にはどの程度の問題なのか)、非常に難しい判断を日々繰り返している。 これ、発信する政府側もそうだし、多分、受け取った側のメディア側もどの線で書くか?という事で苦しんでいたと思います。 |
この
「ただ不確かなことは流すなよ」 |
は下村氏のご発言のように、どこで不確かの線を引くかの判断が、難しかったと存じます。
例に挙げられた「メルトダウン」然り、「SPEEDI(スピーディ)」は猶更、難しかった筈です。
「SPEEDI(スピーディ)」は、当初はあくまでもシミュレーション情報であり、日本では初めての経験で、どれだけ、実際と合致しているかは、詳らかではなかったはずです。
なにしろ、「風評被害」という怪物のおかげで、「福島を避難して、転校されたお子さんが、放射能の件でいじめられもする日本の現状」である中、「SPEEDI(スピーディ)」情報の確かさの判定は困難を極めた筈です。
しかし、本来ならその情報を公表せずとも、内密で、警報すべき地域に密使(?)を送り、住民の安全を図るべきだったかもしれません。
ところが、現実は全く別の機関(?)から、逆の密使が送り込まれて、住民を危機に追い込んでいたようです。
この事は、私達には、伝えられていませんが、
朝日ニュースターの「ニュースにだまされるな 最終回(2012年3月3日) 司会:金子勝氏(慶応大学教授)」が伝えて下さった、 長谷川健一氏(福島県酪農協同組合理事)のご発言を以下に紹介させて頂きます。 |
3月14日11時1分に3号機が爆発して、飯館の一部が屋内退避になった(30キロの圏内に入った)、もう40マイクロシーベルト超えている。 村長に呼び止められて、“このことは話してはダメだよと言われている”。これが問題なのです、3月の末に京大の今中教授らのグループが来て、飯館をつぶさに測った、で彼が言うのには、“もう、信じられないことだ。こんなに線量が高いとこに人が住んでいるなんて信じられない”と言っているのです。 で彼らは(筆者注:よく聞き取れませんでしたが、このように聴こえました)そのデータを村長に持って行ったと、“避難しないと駄目ですよ”と、すると村長は“このデータ公表しないでくれ、して貰っては困る”公表してもらっては困るといわれても、彼らは公表する為にとったデータですから、いずれは公表したのですけれども、その時も村長に“この放射能を浴びながら生活するすべはないか”と逆質問されたと、“それはない”と答えたそうですけど。 |
密使でない「正義の味方」の「京大の今中教授らのグループ」が実測して、飯館村村長に避難を進言しても、なんと村長は「公表しないでくれ、して貰っては困る……この放射能を浴びながら生活するすべはないか」という様だったのです。
更にここでも御用学者が登場していたのです。
それから、一番気になるのは、今度は、私から言わせれば御用学者なる偉い大学の先生方が、飯館村にどんどん来るわけですよ。 そして、体育館とか、集会所に村民を集めて、安心安全講話をやるわけですよ。 それによって今度は村民はどんどん安心して行くわけですよ。 村長さんだって“やあやあ安心しました、有難うございました”とお礼を言っているくらいなのですから。 |
何故、菅さんが「SPEEDI(スピーディ)の結果を直ぐに公表しなかったから、被曝被害が増えた」と訴える前に、このように「御用学者なる偉い大学の先生方の飯館村での安全安全講話」の罪を問わないのでしょうか!?
この御用学者の罪を問うどころか、伝えてもいません。
そして、「朝日ニュースター」の経営が「朝日新聞」の手から「テレビ朝日」の手に移るとともに、この驚くべき事実を伝えて下さった金子氏の番組が、パックインジャーナル同様に消えて行かなければならない現状を他のマスコミは静観しているのです。
でもまた、長谷川氏の発言を続けさせて頂きます。
その中でも、私も酪農家の事が気になるという事で、線量の特に高い所に5軒の酪農家があるんですよ。 そこに行った時の事なんですけど、ジャーナリストの方が、一日くらい前に雨樋の線量を測ったと、なんとそこで1ミリシーベルト(1000マイクロシーベルト)あったと。 その酪農家を訪ねたとき子供たちが外で遊んでいるんです。 洗濯物は外に干してある、大人達も外で仕事をしている。 何だと思ったんですけど、まあ考えてみれば、そういう大学の先生が来て、“安心ですよ、安全ですよ、何の心配もありません”と、こういう事を言っている訳ですから、村民はみんな安心してきちゃった。 普通の生活に戻っちゃったんですよね。 “なんで子供をすぐに避難させないんだ!俺らはいい、とにかく、子供が大事だろ!非難させなきゃ駄目だ!”と言ったんだけど、彼らから、私は“長谷川さん、そんな事言ったって、大学の偉い先生が来て、「安心だよ、安全だよ」、原子力保安院まで来て、「飯館のみなさん大丈夫ですから」と言われてんだよ、行政としてこれ以上何が出来る?”というんですよ。 放射能のあくまでも予測線量、データというのが出たんですけど、その中では20キロ圏内の人たちは“それ逃げろ!”と逃げたけど、被曝していない。 ところが飯館の村民は、こういう村の執行部が、村にしがみついた。「ゴーストタウンにしたくない」、その裏でみんな酷い被曝をしていったんです。 ですから、飯館村民は予測線量ダントツに多いわけですよ。 |
なんと
本来なら、官邸発表が出せなくても、飯館村民の為に自らの官僚の地位をも危険に晒しつつも、 (マスコミの方も誘って)避難誘導をこっそりでも行ってしかるべき(と私は思うのですが)、 現実は逆で 「原子力保安院まで来て、“飯館のみなさん大丈夫ですから”」とのことで、「子供たちが外で遊んでいるんです」 |
と長谷川氏は嘆かれます。この罪は不問なのですか!?
更に続けましょう。
金子氏:長谷川さん自身は酪農家として、その土地を離れることは酪農を事実上放棄するのに等しいわけですよね? ええ、情けなかったですよ。というのは、あの計画避難の設定が出た段階で、飯館村では「牛は飼ってはダメだよ」とだから、我々酪農家の牛乳も出荷はしないよと、でも、おまけがついていた「親牛は移動させてはダメだよ」と、どういう事なんだと、牛をおいて人が逃げろなんとふざけんじゃないぞ、そんな中で我々は、国、県、村、JAとかそういう部分から、一切のフォローを受けられることもなく、自らの決断で廃業という決断をした。 畜産業界が動いたというのは、まさにまあ、(自慢話をするわけではありませんが)私が最初に動いたんですね。その“これはもう駄目だ、酪農家は皆、おれん処に集まれ、そこで苦渋の決断をした”、そして、たまたまその時に、東京電力の堤副社長が謝罪に飯館に来た。 村民2300人くらい集まった。その中で当日の事ですから頭も腹も煮えくり返っていますから、そこでマイクを持って“あんた方に、俺らの気持ちわかるか!今日われわれは苦渋の決断をしたんだぞ!飯館村に酪農家はなくなる”とやったんですよ、そしたら次の日に(筆者注:ここの新聞名聞き取り不能)新聞一面に「飯館の酪農家中止を決定」と出て、その記事が出てから、畜産業界がようやく動いた。 |
長谷川氏の「飯館の酪農家中止を決定」によって、はじめて畜産業界も動いたというのです。
そして、更にまた驚かされます。
除染は期待してません。 一番残念だと思うのは、今飯館村の昨日今日の線量でも、0.6位なのです。 この値は福島市より低いんです。そこで線量計を持って公表されているモニタリングポストまで行って実測すると、全く数値が違うんですよ。 そして、そのモニタリングポストで今やっているところは、完璧な除染がされている。 その箇所だけ下の土まで入れ替えて! そこで私はそこから5メーターくらい離れて、線量計を持って行き測ったら、3.5あるんですそこで。 |
このように、
「モニタリングポストで実測値」さえも偽っているのは、どこの誰ですか!? |
そして、次の長谷川さんの悲痛な声です。
「ふるさと」という4文字の言葉の重さを最近になって私はつくづく思っている。 今、村では、一辺倒に。除染の方向に突っ走っている。 私は、一寸待てよ、それはいい。 ただもう一つの方向性を今からしっかりシミュレーションしておかなくてはダメでしょう!?と申し上げている。 そのもう一方というのは、村を出るという事。 それも早い段階で決断しなくてはならない。 5年6年が除染はダメだとなってからでは、行政は動かないでしょう。 我々の声を聴く村長になってほしい。 金子氏:この話は、新聞にもテレビにもほとんど出てこない。 |
罰っすべきは誰ですか!?
3.11の後(2011年4月11日)、3大テノールとして活躍されたプラシド・ドミンゴ氏の演奏会で、一緒に来られたソプラノのヴァージニア・トーラさんとアンコールで「ふるさと」を日本語で歌われると会場の方も、歌われて居られたヴァージニア・トーラさんも涙していました。
更には、週刊金曜日(2012.3.16号)編集部:成澤宗男氏の記事『もはや信用ゼロ山下氏「健康調査」』の一部を抜粋させて頂きます。
山下座長は学術誌『日本臨床内科医会会誌』 二〇〇九年三月号の「放射線の光と影」と題する記事で、「主として二〇歳未満の人たちで過剰な放射線を被ばくすると、一〇〜一〇〇ミリシーベルトの問で発がんが起こりうるというリスクを否定できません」と書いていた。ところが「3・11」以降、これと正反対の言動をふりまき県内外で批判を浴びる。 昨年四月一日には飯館村のセミナーで「がんのリスクが上がるのは年間一〇〇ミリシーベルト以上。これ未満であればリスクはゼロ」「(村の放射線量では) 二〇歳以上の人のがんのリスクはゼロです」と発言したが、四月二二日に村全域が「計画的避難区域」に指定された。五月二四日に公明党郡山総支部が開催したセミナーでは、「子どもの方が放射線の影響を強く受けるということは、正確にはわからない」などと「専門家」とは思えない発言をしている。 |
(注)
山下(『県民健康管理調査検討委員会』)座長:昨年三月に山下座長が長崎大学から『アドバイザー』として来県した山下俊一氏
この山下氏もまた、長谷川氏が非難の声をあげられた「御用学者なる偉い大学の先生方の飯館村での安全安全講話」の罪を担うべき方であろうことは明らかでしょう。
そしてこのような事実に頬被りし続けるマスコミの方々も「人道に対する罪」ででも罰せられるべきではありませんか!?
(補足)
週刊現代(2010.5.7&14号)には、「総理と東電社長が行くべき」とのヘッドラインの次の記述を見ました。
戦前から日本では、政治とメディアが特攻隊を含む若い兵士たちの活躍を持ち上げ、その陰で政治家や官僚、軍幹部らの失敗の責任が不問に付される──というパターンが繰り返されてきた。今回の原発事故について同様のことを危倶するのは、東京大学大学院教授で哲学者の高橋哲哉氏だ。 「今後、大量被曝しながら原発で作業を強いられた人が亡くなれば、『国家国民を守った尊い人』として、靖国の英霊のように持ち上げられるでしょう。かつての日本は、上層部の失敗によって兵士たちが非業の死を遂げると、国家のための尊い犠牲であるとして、靖国神社というシステムの中で美化してきました。一方、上層部の責任は曖昧にされることが多かった。そういうことが繰り返されるのに、私は賛成できません。 それよりまず、歴代の首相や電力会社社長、官僚、学者ら、『絶対安全』一と言って原発を推進してきた人たちに、今の危険な現場に行ってほしい。そうして責任に向き合ってほしいと思います」 高橋氏によると、原発の下請け労働者は放射線の充満する場所での作業を強いられ、それが原因と疑われる病気や死亡例が後を絶たない。福島第一原発の周辺でも、’70年代からそういう問題が起こっていたが、一部のジャーナリストなどが追及しただけで、事実上、無視されてきたという。 「原発とは平時から、現場の労働者の被曝という犠牲を組み込んでおかない限り、成り立たないものです。そのシステムを今、根本から問い直す時期が来ていると思います」(高橋氏) |
でも、この高橋氏の「歴代の首相や電力会社社長、官僚、学者ら、『絶対安全』一と言って原発を推進してきた人たちに、今の危険な現場に行ってほしい。そうして責任に向き合ってほしいと思います」の訴えを誰が実践したのでしょうか!?
先の拙文≪死を賭した菅さんを葬る東電マスコミ≫に記述しましたように、昨年三月十五日未明、菅直人首相(当時)が東京電力本店に乗り込んだ際の「六十(歳)になる幹部連中は現地に行って死んだっていいんだ。俺も行く」などとの発言をし、福島原発に乗り込みもした菅さんが非難を浴びているのは、いったいどうなっているのでしょうか!?何故でしょうか!?
又、非難を浴びせている方々(マスコミ政治家達……)の頭、心の中はどうなっているのでしょうか!?
(まさか、頭も心も、お金で一杯で!?)
更には、≪東電の無責任、決死隊の皆さん有難う御座いました≫へと続けさせてください。
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